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双極性障害

双極性障害とは

双極性障害はうつ病とともに、ある期間続く気分の変調により、苦痛を感じたり社会生活に支障を来す気分障害とされています。以前は「躁うつ病(そううつびょう)」と呼ばれていました。有病率は1%といわれています。気分が高まったり落ち込んだりと、躁状態とうつ状態を繰り返す脳の病気です。
激しい躁状態とうつ状態のある双極Ⅰ型障害と軽い躁的な状態(軽躁状態)とうつ状態のある双極Ⅱ型障害があります。Ⅱ型の軽躁状態はⅠ型の躁状態に比べて、症状が軽いため、社会的な問題となることが少ないので、軽い病気だと思われがちですが、Ⅱ型はⅠ型に比べてコントロールが難しくうつ状態を再発しやすいと言われています。また軽躁状態に気づきにくく、またパーソナリティー障害との鑑別なども難しく、診断されるまで時間がかかることもあります。

 

症状

症状はうつ状態と躁状態を期間ごとに繰り返します。

・うつ状態

うつ状態では、楽しいことがあっても気分が晴れない、好きなことにも関心がわかずにできない、一日中憂鬱な気分で眠れない、食欲低下といったうつ症状がみられます。

・躁状態

躁状態では、気分が高ぶって誰にでも話しかけてしまう、寝ずに動きまわるような過活動といった躁症状がみられます。またいつもより少し活動的で周りから「いつものあの人らしくない」「元気すぎる」と思われるような軽い状態は軽躁状態と呼ばれます。

うつ病との違い

双極性障害は躁うつ病とよばれているようにうつ病と似ているように考えられがちですが、両者は全く違う病気であり、治療法も異なります。うつ病は単極性うつ病ともいい、気分の落ち込みや意欲低下、不眠といったうつ症状だけがみられますが、双極性障害はうつ状態と躁状態または軽躁状態を繰り返す病気です。多くの患者さんはうつ状態で受診されますが、その後躁状態になり、初めて双極性障害と診断されます。一般的に自身で軽躁状態を病気だと認識するのは難しいです。いつもより調子がいいと感じ「これが本来の自分なのかも」と思う方もいます。そのため診察を受けようと思るのは、気分が落ち込んで苦しくなったうつ状態の時がほとんどです。特に双極Ⅱ型障害はⅠ型のように激しくないのでうつ病と診断されることもあります。また混合状態といってうつ状態と躁状態が混じって出現することもあります。

診断について

躁状態もしくは軽躁状態とうつ状態を繰り返すことで診断されますが、うつ状態のとき、単極性うつ病によるうつ状態のなのか双極性障害のうつ状態なのか、反応性のうつ状態なのか、他の体の病気(甲状腺の病気等)でうつ状態となっているのか、区別するのはなかなか困難となります。双極性障害の患者さんが正しい診断を受けるまで平均7.5年かかったとの報告もあります。

「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル」等の診断基準が用いられています。DSM-5では以下のように定義されています。上記のような症状をきたしていても、双極性障害が原因ではなく、甲状腺の機能障害等の身体疾患やステロイドなどの薬剤が原因のこともあるため、問診上必要な場合は採血なども行います。

◎躁病エビソード

以下のA~Eをすべて満たす必要がある。
.気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的で、またはいらだたしい、いつもとは異なった期間が少なくとも1週間持続する(入院治療が必要な場合、持続期間は関係ない)。

.気分の障害の期間中、以下の症状のうち3つ(またはそれ以上)が持続しており(気分が単にいらだたしい場合は4つ)、はっきりと認められる程度に存在している。

①自尊心の肥大、または誇大。

②睡眠欲求の減少(例:3時間眠っただけでよく休めたと感じる)。

③普段よりも多弁であるか、喋り続けようとする心拍。

④観念奔逸(考えがまとまらず発言がバラバラ)、またはいくつもの考えが競い合っているという主観的な体験。

⑤注意散漫(すなわち、注意があまりにも容易に、重要でないかまたは関係のない外観刺激によって他に転じる)。

⑥目標志向性の活動(社会的、職場または学校内、性的のいずれか)の増加、または精神運動性の焦燥。

⑦まずい結果になる可能性が高い快楽的活動に熱中すること(例:制御のきかない買いあさり、性的無分別、またはばかげた商売への投資などに専念すること)。 

.症状は混合性エピソードの基準を満たさない。

.気分の障害は、職業的機能や日常の社会活動または他者との人間関係に著しい障害を起こすほど、または自己または他者を傷つけるのを防ぐため入院が必要であるほど重篤であるか、または精神病性の特徴が存在する。

.症状は、物質(例:乱用薬物、投薬、あるいは他の治療)の直接的な生理学的作用、または一般身体疾患(例:甲状腺機能亢進症)によるものではない。

◎軽躁病エビソード

以下のA~Eをすべて満たす必要がある。
A: 異常かつ持続的な高揚し・開放的または易怒的な気分、そして異常かつ持続的な増大した活動または活力が、一日のうち殆どほぼ毎日存在するいつもと違った期間が少なくとも4日連続で持続する。
B: 気分の障害と活動と活力の増大の期間中、以下の症状のうち3つ(またはそれ以上、気分が単に易怒的な場合は4つ)がはっきりと認められる程強く、通常のふるまいからの変化として持続して存在したことがある。
 1. 自尊心の肥大、または誇大
 2. 睡眠欲求の減少(例えば、3時間眠っただけでよく休めたと感じる)
 3. 普段よりも多弁であるか、しゃべり続けようとする心迫
 4. 観念奔逸、またはいくつもの考えが競い合っているという主観的な体験
 5. 注意散漫(すなわち、注意があまりにも容易に、重要でないかまたは関係のない外的刺激によって他に転じること)が報告されるか観察されること
 6. 目標志向性の活動(社会的、職場または学校内、性的のいずれか)の増加、または精神運動性の焦燥
 7. まずい結果になる可能性が高い楽しい活動に熱中すること(例えば制御のきかない買いあさり、性的無分別、またはばかけた商売への投資などに専念すること)
C: そのエピソードが、症状が無いときのその人の性格特性ではない、機能における明確な変化を示している。
D: 気分の障害と機能の変化が他者によって観察できる。
E: 気分の障害は、社会的または職業的機能に著しい障害を起こすほど、入院が必要であるほど重篤ではない。もし精神病性の特徴が存在するのであれば躁病と定義する

 

治療

双極性障害は早期に正しい治療を行えば、症状をコントロールしながら安定した日常生活を送ることができます。双極性障害の治療目標は躁状態やうつ状態から回復し再発を予防することです。この病気は再発するたびに次の再発までの期間が短くなり、悪化しやすくなるため、再発を予防することが大切です。薬物療法や心理社会的治療が行われます。

心理教育

患者さん自身が疾患について正しく理解し、病気を受けいれコントロールできるようになることが目的です。日々の症状を客観的にとらえ、症状悪化の前兆をつかめるようになることを目標とします。

薬物療法

双極性障害の治療において、薬物療法は躁状態やうつ状態の改善だけでなく、再発予防のため症状を安定させるのに欠かせません。現状では薬物療法は気分安定薬と抗精神病薬が使用されます。これらの薬は躁状態やうつ状態の治療だけでなく、再発予防にも有効とされています。適切な治療を受けないと再発を繰り返してしまいます。症状がおさまったからといって内服治療をやめてしまうとほとんどの人が再発してしまうので、正しく服薬を継続することで症状を安定化され、コントロールしながら社会生活を送ることができるようになります。当院では日本うつ学会などの「双極性障害ガイドライン」にそった薬物療法を心がけています。

 

再発予防

しっかりと休養をして十分量の分安定薬と抗精神病薬を十分な期間内服することが必要です。ちょっとよくなったからといって、すぐに内服をやめてしまうと再発する可能性が高くなります。

 

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